Special Interview vol. 11
★では、そろそろ7/25に行われる『LiBLAZE』のライブについて聴かせていただこうと思います。まず、『LiBLAZE』というグループ名の由来を聞かせていただけますか?
“BLAZE”は、“炎”とか“燃え上がる”という意味なんです。以前、作った曲名で『BLAZE』っていうのがあって、僕の苗字も“火口”だし。その前についてる“Li”っていうのは『Life is Live, Live is Life』っていう、ずっと掲げてきたテーマから取りました。“i”だけを小文字にしたのは前のグループ名の『STRiPES』から何か引き継ぎたいという気持ちからです。
★今回のライブの見どころは?
僕は今までと同じことをなぞって行くのが嫌なので、今回もこれまでとはまったく形態を変えてやってみたいと思っています。具体的にどこが、っていうのは見てのお楽しみ、ということなんですが…たとえばLiBLAZE特有のリズムの見せ方のアプローチですね。楽器としてのタップってなんぞや、っていうところをいろんな見せ方でやってみたいと思ってるんです。

なので、自らへの問いかけとして、「音楽にタップは必要なのか、必要だとしたらそれはどんなポジションで何をするべきなのか」っていうところを、そんなに難しくなりすぎないところで探って行こうかと。
とにかくキーワードは“音楽”ですね。それを自分中心の目線じゃなくて、客観の目線でとらえてみたい。エンターテイメント的な要素ももちろん入ってくると思いますけど、それもあくまで“音楽”の目線でとらえて行きたいと思ってます。
★なるほど。そして、スペシャルゲストにサックスのMALTAさん。豪華ですね。
MALTAさんとはニューヨーク時代から、ある方を通じてご縁があって、その後、お仕事でもご一緒したことがあったので、とても楽しみにしています。
そのほか、ゲストとしてG-CLEFで活躍されていた柏木広樹さんと、R&BシンガーのSatsukiさんをお迎えします。管楽器と弦楽器と唄とタップという組み合わせ、そして大御所サックスプレイヤーもいれば若い女性シンガーもいるというコラボレーションの中で、タップの可能性を広げて行けたら、というところですね。
★STRiPESの時代から数えると、HAMACHIさん、Battさん、Kenさん、SAKATAさんの若手4人がメンバーに加わって、もう3年が過ぎました。その成長ぶりにも期待大ですね。
そうですね。当然、彼らもいろいろなことを経験しながら努力して来たわけですから、技術的にも精神的にも大きく成長していると思いますよ。僕も大いに期待しています。でも、あえて厳しい言い方をすれば、プロとしての第一歩をようやく踏み出したところなのかもしれないなーとも思います。
★”プロ“という言葉には、それを仕事にしているという以外にもいろいろな意味があると思います。HIDEBOHさんが考えるプロとは?
たとえば、ショーが終わって「お疲れさまー」とか言ってる時に、お客様が通りかかったら、すぐ気づいて「ありがとうございました!」と言えるかどうか。お客様そっちのけで、知り合いに「どうだった?どうだった?」って言ってるうちは、それはプロのステージじゃなくて“発表会”だと思うので。もちろん発表会が悪いということじゃなくてね、プロというものはお客様がいないと成立しないんだっていうことをしっかり自覚して、お客様に対する誠意を持った生き方が出来るかどうか。そこはすごく大事だと思うんですよ。
それと、やはり“芸の追求”ですよね。単に「新しいステップが出来るようになりました!」っていう会話はやめてね、というのもよくメンバーには言ってます。
たとえば、一生懸命練習して、人が創った難しいステップが出来るようになったとしても、それは単なる技術の向上であって、プロはそんなことに満足してちゃダメなんだと。世界のトップを行くダンサーたちがこぞってマネするようなステップを創ったら、それは拍手に値することですけどね。
それは新しいステップを創ることだけじゃなくて、見せ方でもいいんです。同じ原作を元に芝居を創っても、違う演出家が演出すると、まったく違うものになりますよね?それも立派なオリジナリティーだと思うので。オンリーワンにならなければ、お客様は見たいと思ってくれませんから。
あと、今回のライブのタイトルにもある”Smooth“ですね。これは僕自身もずっと教えられて来たことなんですけど、物事はなんでもスムーズに流れるから気持ちがいいわけで、プロならば、出ている音がスムーズかどうか、つまりはお客様が聴いて気持ちのいいものかっていう判断力を磨かないといけないですね。
これも彼らには繰り返し言っています。たとえばダイアン・ウォーカーの、ステップ自体はそんなに難しいものじゃなくてもチーチッチチーチッチっていう心地よいタップ、あれがタップ本来の良さだと思うので。
★6歳でタップを始めてもう35年。ご自身のタップ界における立ち位置や役割については、どう考えていらっしゃいますか?
プロを目指す若いタップダンサーもどんどん出て来たので、そういう人がどんどん人前で踊ることが出来る状況を作りたいと思いますね。その道のりを整えて、土壌を作るために自分が出来ることをやらなければと思います。
その相手は文化庁かもしれないし、もしかしたら芸能界なのかもしれないですけど、いずれにしても大変なことであることだけはわかってるんです。でも、大変でもやらないと、状況は何も変わりませんから。
たとえば、ブロードウェイでミュージカルやってますよね。そのチケットは、そのへんのお店やインターネットでいつでも買える。日本で言えば、吉本新喜劇はいつ行ってもやってるし、チケットもいつでも買える。でも、タップはそうじゃないですよね。

それはなかなかすんなりは行かないから、その過程では耐えないといけないこともあります。ほんとはあんまりやりたくないことをあえてやることもあるかもしれない。それをね、誰かが見た時に「あれ本気でやってんの?HIDEBOHさん」って思ったら、それは僕にとって悲しいことではあるけれど、たとえば2年後にそれが実を結んで状況が少しでもよくなって、その時に「あー、あれはそういうことだったんですか」ってわかってもらえればそれでいいかなと。
★タップをメジャーにしたい、ということですか?
簡単に言えば、そうですね。それには、アステアやジーンケリーやボージャングルやグレゴリー・ハインズや、そういった素晴らしいアーティストたちが創り上げたものに敬意を表しながらも、彼らとはまた違う何かを創って行かないとダメなんじゃないかと思うんですよ。どんなに上手くてもね、新しくなければ「すごいね。でもそれ前に見たことあるよ」とシビアに言われちゃいますから。
若い人たちにもね、その時々のカッコいいファッションやステップをマネるのが悪いとは言わないけれど、それはどこまで行ってもカッコいいモノマネに過ぎないんだよ、と言いたいですね。逆を言えば、ほんとはこういう帽子をかぶりたいけど変人扱いされそうだから出来ないと思ってる人がいたら、どんどんやりなさいと。周りの目を気にしてやらないということは一見して無難かもしれないけれど、それは自分というものをどんどん削って行ってることなんだっていうことにすら、気づいていない若者が怖いと思うんです。
僕はやっぱり、一種類しかないっていうのが嫌なんですよ。若い人はその若さを武器にしてチャレンジしないと。今の若い子は真面目になりすぎるから、もう少し肩の力を抜いて、視野を広げて、人種とかジャンルとかにこだわらずにいろんなものを見るべきだと思いますね。そうしないとやっぱりみんな同じになって行っちゃいますから。
★でもやはり、そのベースとなる基礎的なものは必要ですよね。
もちろんそれはあります。技術的なものはおそらく一生レベルでずっと突き詰めて行かなくてはいけませんから、それをやりながらイマジネーションのチャレンジを続けて行ってほしいなと思います。チャレンジを止めてしまったら、やはりそうですよね、というものしか生まれて来ませんからね。
★HIDEBOHさんは今でもかなり練習なさるんですか?
練習しに行かなきゃいけないから行くっていうのはなんだか抵抗があるんで、思い立った時にそのへんに毛布敷いて練習したり、振りを作ったり、最近はそんな感じが多いですね。やる時は徹底してやりますけど。
でも、前に比べると、練習量は減っちゃったんで、それがある意味、今はストレスでもありますね。もっとやらなくちゃと思います。
★一番練習していた時は、どのくらい?
18くらいから21くらいの頃がマックスでしたね。毎日8時間とか9時間とかやってました。
でも、練習しないといけないからやってたわけじゃなくて、好きでやってたら時間が経ってたというか。自宅の空いたスペースにベークライト敷いて、曲かけて踏んで、「これ、カッコいいかも」とか言っては、途中でDJの練習をしてみたり。で、疲れたら寝て、起きてまた踏む、みたいな。
★HIDEBOHさんみたいなタップが踏めたらいいなーと憧れている人に、何かアドバイスがいただけたら。
やっぱり徹底的に“音”ですかね。レッスンしてても思うんですけど、ステップだけ見てるから音を聴いてない人が多いんですよ。音の気持ち良さを。

★それは、初心者も上級者も、レベルに関係なく心に留めておきたいことですね。
レベル問わず、共通することだと思いますよ。仮に、A、B、Cってステップの難度が上がって行くとするじゃないですか。で、そのそれぞれに1、2、3っていう表現の深さのレベルがあるとすると「Aのステップは出来ました。でもレベル1のまま、すぐBのステップを習いました。でもまたレベル1のままCのステップをやりました。出来ましたけどまたレベル1でした」っていうのでは、ステップの種類は増えて、難しいことが出来てるように見えても、永遠にその人はレベル1のままなんですよ。
★それは難しくはないけれど、ものすごく深い。
そうなんです。色で言えばね、同じ赤でも淡い赤とか、オレンジに近い赤とか、いろんな赤がありますよね。でも、いつまで経ってもレベル1の人は、「赤、やりました!じゃあ、次、黄色お願いします!」って、赤か黄色か緑か、そういう色の種類にしか頭が行かないから、赤の中にもいろんなニュアンスがあって、ものすごくいい赤もあるっていうことにずっと気づかないまま終わってしまうと思うんです。
こう言うと、なんだかすごくマニアックな話をしてるみたいですけど、本当に大事なのはそこなんじゃないかなーって僕は思いますね。
★HIDEBOHさんも、まだまだそこを追求している人、ですか?
まだ全然ですよ。一生終わんないでしょうね。これ、決してカッコつけてるわけじゃなくて、まだまだいくらでもやることあるなーと、ほんと思います。このへんでもういいでしょ、ってしちゃいたいけど、そうは行かなくて、時々また後戻りしちゃったり。
★全国各地で開いているワークショップでも、そうしたことを伝えている?
そうですね。足の持って行き方とか、体重の移動の仕方みたいな、スムーズなタップを踏むために必要なことにもポイントを置いてますけど、やっぱり「自分の音、聴いてますか」とか、音のことはすごく言いますね。
あとは、リズムですね。基本的なリズムのとらえ方を知らない人も多いので、そういうこともわかりやすく伝えるようにしています。耳だけを頼りにノリだけでやってると、どんなリズムを出したいのかというのが明確に伝わらなくて、会話で言ったら言葉尻がはっきりしなくてウニャウニャ言ってるだけみたいになっちゃいますからね。俺、O型なんで結構アバウトなとこはあるんですけど(笑)、芸事でアバウトは怖い、芸事だけは厳密に、って思うんで。
習いたいから100円払います、という人には、1000円分、返したいと思うんです。それはワークショップだけじゃなくて、ほかの仕事もすべてそうですけど、相手の求めているものを、それ以上の形で絶対に手渡したいんですよ。たとえば、どんなにおいしいカツ丼を僕が用意していても、相手が食べたいものがラーメンだったら、カツ丼を押しつけることは相手にとっては迷惑以外の何物でもないですからね。自己満が嫌なんです。
ワークショップはタップをもっと広めたいという気持ちでやっているんで、これからも呼んでいただけたら精一杯のものをお返ししたいと思いますね。
★また、お母様の火口ひろ子さんとともにHIGUCHI DANCE STUDIOを率いて指導にあたり、発表会やナショナルタップデイでスタジオ作品を発表されています。こうした作品づくりは、HIDEBOHさんにとってどんな意味合いを持つのでしょうか。

確かに何もないところから生み出す作業なので苦しいことはないと言ったらウソになりますけど、楽しみながらの苦しみと言うか。「考えてたら朝になっちゃったよー、最悪だよー」って言いながら、実はそれはとっても幸せだったり。何かを思いついた時には自分自身が一段グレードアップ出来たかなという実感がありますし、まさにアーティスト冥利に尽きるとはこのことですね。お金にはならないんだけど、すごく心が豊かになります。
★さて、まだまだお話をお聞きしたいところですが、そろそろ最後の質問をさせていただこうと思います。よく聞かれることかもしれませんが…HIDEBOHさんにとって、タップって何ですか?
救い主、ですね。芸は身を助ける、っていうのがありますけど、まさにタップのおかげで生活も成り立ってますし、タップをやっていなかったら会えなかっただろう偉い人、素晴らしい人にもたくさん出会うことが出来たわけで。性格も合わないし、たぶん一生話すこともなかっただろうなという人とも仲良くなっていたとしたら、それもまたタップのおかげなんですよね。
自分の性格から言っても、タップがなかったらアンタやばかったよ、って我ながら思うところがいっぱいありますし。
★ほんとですか?
あります、あります。それはもう本当に。もうサボるの大好きだし、仕事としてタップやってなかったら、留守電にメッセージが入ってても「めんどくさいから、かけ直さなくてもいいや」ってなっちゃうような性格でもあるし。
タップやったら拍手をもらった、じゃあ頑張らないと、って思う。そうすると、あんなにタップ頑張ったんだから、ほかのことでその頑張りが帳消しにされるようなことがあったら悔しいし、じゃあ、ちゃんとしなくちゃって思うわけですよね。ほんとにタップのおかげと思えることはたくさんあるので、親にも感謝しなくちゃと思いますし、タップと出会えたことによって手にしたものを、この先もすべてポジティブな方向につなげて行かなくては、と思いますね。
★タップにも恩返ししないといけないですね。
そうですね。あと何年生きるかわからないですけど、それは僕なりの結論を出すことなんじゃないかと思うんです。
結論を出せば、誰にかわからないけど…もしかしたら神様にかもしれないけど、「アイツはやることやって死んだ」って言ってもらえるんじゃないかと。
これからもタップに出会えたことに感謝しながら、自分の道をしっかりと歩いて行けたらと思います。

★ありがとうございました!



