みなさん、ご無沙汰しております。タップダンサーのNatsuoです。ずいぶんと間が空いてしまいましたが、Tap Around the Worldの記事を再び書かせていただけることになりました。

 前回の僕の留学していた街、フランスのブザンソンを中心としたお話に引き続き、今回は“華の都”またの名を“芸術の街”と呼ばれる首都・パリでの経験をもとに少しお話をさせていただこうと思っています。僕自身はもう留学を終えて日本に戻ってきているんですが(笑)。

 ブザンソン中心地にタップダンスのスクールが3つしかなかったのに比べ、当然ながらパリではもっと多くのタップ(フランス語では『claquettes=クラケット』)のスタジオが存在します。その多くは、かのフランス大革命でも有名なバスティーユ広場近辺に軒を連ねており、道を歩いているとタップの音が聞こえてくることもしばしばです。

 少し時間があったので、そのうちの1軒、インターネットの検索で“claquettes paris”と入れるとトップに出てくる『Swing Tap』というタップシューズ店、兼タップダンススタジオにお邪魔して、レッスンを1つ受けてまいりました!!

 平日の昼にレッスンを受けに来る人たちって、いったい何の仕事やってるんだろう・・・とは思いましたが、生のジャズピアノに合わせていろいろなステップの練習をする、というクラシックなタイプのレッスンで、ニューヨークで少しだけそういったレッスンを受けた時の雰囲気を思い出しました。

 あとパリでは…そうだ、セーヌ河には何本も橋がかかっているのですが、その中に数本、歩行者専用の橋があり、他の橋とは違って木でできています。フランスの街はほとんど石造りで、木の床があるところはその何本かの歩行者専用橋以外見つけることができなかったので、パリにいた時はしばしばその中のひとつ、『Pont des Arts (芸術橋、ポン・デ・ザール)』の上で練習をしておりました。

毎年6月下旬にはフランス全土で、街のどこででもストリートの音楽パフォーマンスが許可される『音楽祭』の日があり、その時には僕もその橋で、少しですがパフォーマンスをさせていただきました。

 道を歩く方々の足を止めることもでき、またたくさんの拍手もいただいてうれしかったです!!その時の様子も一部ですがYouTubeに上げているので、ぜひご覧になってみてください。

 それとこれも帰国直前の話で少し蛇足になりますが、パリには若い頃アメリカで活躍していたサラ・ペトロニオ(Sarah PETRONIO)という女性のタップダンサーがいて、STOMPにも参加している娘さんのリーラ(Leela)と一緒にワークショップやライブを定期的に行っています。僕も出発前にみすみ”smilie”ゆきこさんに紹介していただいたのですが、留学中なかなか会う機会を持てず、帰国直前になってやっとライブに顔を出すことが出来ました。しかもその時のライブのゲストは熊谷和徳さん。久しぶりに日本のタップダンサーと会えて、とてもうれしかったのを覚えています。

 “欧米”とくくられるだけあってアメリカ文化の流入、または同文化との交流は強く見受けられます。1900年代前半のミュージカル映画は評価の高いものも多いですし、そのため『タップ』というものは、知識・概念として社会的にも強く根付いており、浸透していると言えるでしょう。

 しかし、タップダンスシーンの盛り上がりでいうと、アメリカにはもちろん及びもしませんし、昨今かなり知名度もタップ人口も増えてきた日本の方がはるかに盛り上がっているような印象を受けました。

 また、「フランス人はアメリカ嫌い」とよく言われますが、それも若い世代ではかなり緩和されてきたものの、まだまだ思想的には“アメリカ的なもの”との対立意識は根強く残っています。

僕が日本の大学で勉強したことにも関わってくるので幾分、社会思想学的な側面がありますが、これはもっと掘り下げると“アングロサクソン的なもの”、すなわちアメリカ・イギリス文化との対立でもあります。タップはアイリッシュもアメリカンもどちらも結局はアングロサクソン文化、フランス人はそうではない自分たち自身にルーツを持つものを大切にしようとします。
 
僕としては、どこの文化もお互いに影響し合い、混ざり合って変化し、また進歩し続けているので、純粋に「これは100%自分達から生まれた文化だ!!」と言い張るのはかなり無理矢理だし、むしろ不可能ではないかと思うんですが・・・。

 閑話休題、そういったわけで、どちらかというと今のフランスのダンスシーンを支配しているのはタップでもジャズダンスでもヒップホップ(若い世代では日本で言う『Breaking』がフランスでの『HipHop』として広まっているようですが・・・)でもなく、やはりコンテンポラリーダンスなのではないかと思います。

ダンスによる自己の純粋な感情表現を目指すコンテンポラリーダンスは、観客を沸かせることのみを目的とした“エンターテイメント”を蔑視し、自己表現・感情表現の巧みさ、そしてそこに付随する世界観こそを重視するフランス的・ヨーロッパ的な芸術思想から見て非常に理にかなっているもののように思います。そう考えると、フランスでコンテンポラリーが流行るのは自然なことかもしれませんね。

 コンテンポラリー=難解というイメージもあるようですが、ただ単に抽象的でわけがわからないというものではないと思います。僕自身、ヨーロッパでもコンテンポラリーの舞台は何度か見ましたし、日本でもバレエダンサーの西島千博さんとお仕事をご一緒させていただいている関係で何度か拝見させていただきましたが、質の高いコンテンポラリーダンスの作品には、それを見る者を現実ではない、完全に他の世界に連れていく強いエネルギーと世界観を感じます。

このことはダンスに限ったことではなく、すべての『芸術作品』に重要なものだと思いますが、特に現代のタップはこの点で他の分野に比べ、遅れをとっているような気がします。最近は技術や新しいステップばかりを見せ合うスポーツ競技のようで…。もちろん自分自身のパフォーマンスもまだまだだと思いますが、タップを見ていて、ここではない、どこか他の世界に飛ばされた感じを味わうことはほとんどないですし、むしろ、ジーン・ケリーやフレッド・アステアらのミュージカル映画の方がよっぽど1つの世界観を作り上げることが出来ているように思います。

 というわけで、日本に帰国してからはこのポイントに焦点を当てて、『どうやったらタップを使って1つの新しい世界を創り上げられるのか』『そのためにはどのようにタップを使えばいいのか』ということをメインテーマにイマジネーションを膨らませております。なかなか1つだけの答えを見つけるのは難しいと思うので、いろいろと実験的に作品を作っていくつもりです。今後とも、応援のほどよろしくお願いいたします。


★パリの音楽祭での橋上パフォーマンス動画
http://www.youtube.com/user/TAPbeats#p/u/15/wjnfBYOk8Ro

★帰国後のパフォーマンス動画
http://www.youtube.com/user/TAPbeats#p/u/0/0EGkKZWOHZM





Natsuo(清水夏生・しみずなつお)
 1987年6月12日生。7歳よりタップダンスを始め、その後、ヒグチタップ・ジャズダンススタジオ( 現・HIGUCHI DANCE STUDIO ) にて火口ひろ子やHIDEBOHらに師事。映画『座頭市』や、劇団SETミュージカル『天国への階段』をはじめとする数々の舞台・イベントでの活躍を経て、2007年には『THE BREAKMAN SHOW』に出演。『SUPER DANCE PREMIUM 2008』でのバレエ、ジャズダンス、コンテンポラリーのダンサーと共演経験や、フランスへの1年間の留学を通して、タップダンスの新たな可能性を実感し、ジャンルや既存の概念を超えた新しいダンススタイルの確立を追求している。

 2009年9月には『NEO BALLET×ニジンスキー ~千夜一夜 夢のプリンシパル ガラ~』にゲスト出演。2010年2月放送の日本テレビ系『世界一のshowタイム』では、最高額の賞金を得た『スーパー座頭市』の演目に参加した。2010年3月18日&19日には、東京・吉祥寺 STAR PINE’S CAFÉにてタップライブ『Néoclaquettisme』を開催(詳細は、http://members3.jcom.home.ne.jp/makotodes/newpage1.html)。また、4月よりオープンする西島千博氏主宰のNEOBALLET STUDIOで、タップエクササイズの講師を務める予定になっている。

●NatsuoオフィシャルWEBサイト http://members3.jcom.home.ne.jp/makotodes/





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